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0306雑記草


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030601

 やかんを買った。今まで使っていた円柱状でほうろう製のやかんが駄目になったわけではないが、使いにくいのをずっと我慢して使っていた。取っ手がすぐ横に倒れてしまうので、火にかけると取っ手が熱くなる。十年以上使ったのだからもう買い換えてもバチは当たらんだろう、ということで新しいのを買った。

 以前から欲しいと思っていたやかんがあった。家に自動的に送られてくる通信販売*1のカタログを見ていて、今度買うやかんはこれがいいなぁ、と思っていた。

 柳宗理(やなぎ そうり)*2という人が考えたやかん*3である。ステンレス製でつや有りとつや消しとがあり、つや消しの方が千円高いが、こちらを買った。定価が6000円もする。定価で買うのもしゃくだからオークション*4に出ていないかと思い探してみた。定価の八掛けで新品のやかんの出品を見つけたので、早速落札した。

 見た目は今まで使っていたやかんと較べると同じ2.5リットルの容量なのだが何となく小さい。つぶれた形がそう思わせるのだろう。柳氏が考えた形*5実際に販売されているやかん*6の形とは少し違っている。いずれにしろ安定感のあるいい形だ。

 やかんの底には刻印*7がある。底に刻印するところがまたいい。筆者は金属に施された刻印*8が好きなのである。柳氏のマークに加え、「マーシャンMartian*9」マークも付いている。

 筆者の琴線に触れる事柄が何重も重なっている非常に嬉しいやかんである。



*1 通販カタログのディノス
*2 YANAGI Sori, A DESIGNER
*3 柳 宗理 ケトル
*4 Yahoo!オークション
*5 早く沸くヤカン、1953、東京ガス製作
*6 フライパン倶楽部
*7 sori.jpg
*8 サボテンマーク
*9 マーシャン

030602

 朝、自動車を走らせていたら、前方を走っていた自動車の運転手が何やらごそごそと動いている。よく見ると運転しながらワイシャツを着ようとしている。朝に自動車を運転しながら電気ひげ剃りでひげを剃っている人はよく見かけるが、運転しながらワイシャツを着る人は初めて見た。

 実際に自動車を運転しながらワイシャツを着る人を見るのは初めてだったが、映像としては見たことがあった。「Mr. Bean*1」で出てくる。「Mr. Bean*2」とはテレビジョンコメディー短篇ドラマで主人公の名前でもある。立派な大人ではあるが天真爛漫な主人公の日常を描いたドラマで非常に面白い。何度見ても笑える。

 ある日、Mr. Beanは朝に歯医者を予約していたのだが、寝坊して予約時間に遅れそうになる。慌てて寝間着のまま自動車*3に乗り込み、運転をしながらワイシャツ、ネクタイ、ズボンを着ける。

 こんな事をするのはMr. Beanぐらいだろうと思っていたが、本当にそれをしている人がいることを知って少し嬉しかった。もしかしたら自動車を走らせながら着替えていた人はMr. Beanを見たことがある人かも知れない。自動車を走らせながらワイシャツを着るというのは、普通、思いつかないだろう。



*1 Mr. ビーンのホームページ
*2 Mr Bean - The Animated Series
*3 Rowan Atkinson and Mini - Mr. Bean - Art.com, posters, prints and fine art

030603

 「ペイオフ制度*1」というのがある。日本語で言うと「預金保険制度*2」のことで、預金者の預金の保護を目的に作られている制度である。

 この制度は預金「全額」保護ではなく、あくまで預金保護である。この考え方は預金保険機構*31971年に発足した時から変わっていない*4ようだ。

 生半可な英語の知識から「ペイオフpayoff」の「off」の語感*5で、金融機関が破綻した時に預金が全額払い戻されないことを意味すると勝手に思っていたが、調べてみるとそうではないようだ。payoff*6とは「精算」とか「賃金の全額支払い*7」という意味である。これがどうして預金「一部」保護の意味に使われるのだろうか。

 預金「保護」制度ではなく、預金「保険」制度という言葉があやしい。金融機関が破綻して預金者に預金を払い戻しできない事態が発生した時のために金融機関が保険を掛けて備えている銀行側の制度であって、預金者の預金を保護して守ることを念頭に名付けられた預金者側の制度ではないようだ。「ペイオフ」とは「預金保険機構から保険の範囲内で支払われる」という部分を指してそう言っているのだろう。

 この制度が発足してから約25年後、実際に金融機関の破綻が起こった*8。この時、預金保険機構からの金融機関への資金援助のみで預金者に預金が直接支払われる事態には至らなかったが、預金者の動揺を抑えるために特別措置として96年から5年間は預金保険機構から預金を全額払い戻すような仕組みにした。結局、それ以降も預金保険機構が預金分を直接支払う局面発生していない。

 「ペイオフ解禁*9」とはこの96年からの特別措置を解除するという意味になる。5年間の全額預金払い戻しも預金保険制度すなわちペイオフ制度の一環であるので英語の「payoff」の本来の意味からすれば「ペイオフ解禁」は変な言葉のような気がする。



*1 預金保険制度(いわゆるペイオフ制度)とは
*2 預金保険制度の解説-制度の概要及びQ&A-
*3 預金保護機構
*4 City Life Club ●"預金保険制度"に関するミニ歴史
*5 Mug Web Magazine 「松本おじさんのトピック解説」 ペイオフについて勉強しよう
*6 pay・off - goo 辞書
*7 payoff. The American Heritage® Dictionary of the English Language: Fourth Edition. 2000.
*8 バナナ円 預金保険制度とは
*9 ペイオフ解禁への対応について

030604

 ペイオフ*1の続き。「ペイオフ解禁*2」となれば、銀行が潰れた時、自分の預金の内1000万円を超える部分は戻ってこない場合が発生する。まぁ、そんな大金は銀行に預けていない*3から大丈夫と思っていたが、そうではない。

 銀行が破綻すれば、預金の引き出しが暫く出来ない。潰れた日にATM*4が動いているはずがない。銀行にある預金は自分の物のままであるが、自由に出せなくなる。これを回避するために、ペイオフが発動された場合「仮払い*5」が行われる。仮払いとは、預金者が当座の生活をしのぐために一口座当たり60万円を限度に受け取ることができる。そのため保険事故発生の日から一週間以内に預金保険機構は仮払いの実施*6をしなければならないことになっている。

 ペイオフ制度によって確実に払い戻される上限の1000万円とは、一つの金融機関で一人の預金者当たりの預金金額なので、その金融機関に複数の口座を持っている人に対してはそれらの口座にあった預金を全てをまとめて預金金額を確認した上で支払をすることになる。これは「名寄せ*7」と呼ばれ、その作業には時間がかなりかかるらしい。その間の応急措置として「仮払い」をするわけである。

 潰れた銀行で一体誰が一所懸命「名寄せ」作業をやるのかよく解らないが、顧客全員の口座情報を整理するのだからとにかく時間がかかるだろう。

 これからが問題である。仮払いは一週間以内とあるが、残りの預金の支払までの期間は特に決まりがあるわけではないようだ。極端なことを言えば「名寄せ」に10年ぐらいかかってもいいのである。これでは60万円までしか支払われないのと同じだ。更に連鎖的に大型銀行が破綻した場合は預金保険機構の保険機能では到底賄えなくなるだろう。この時もあくまで1000万円迄は保証するが、30年間無利子の分割払いぐらいになってしまうかも知れない。その間にインフレが起こってしまえば、政府や銀行の思う壺だし、預金者は泣きっ面に蜂となる。

 そもそも銀行に金を預けるだけで金が自動的に増える、というのを当然のことと期待しているのが間違いなのだろう。他人に任せるのであればその危険性も十分理解すべきなのである。ではどうすればいいのか。上に書いたようなことは極端すぎるので考える必要はないが、現金資産が1000万円以上なくても銀行に預けるのは程々にしておいて、他の形での貯金を考えた方がいいような気がしてきた。

 仮払いは一預金者当たりではなく「一口座当たり*8」60万円までである。これを踏まえて60万円以下の口座を沢山作っておけば、いざという時は役に立つかも知れない。



*1 ペイオフ
*2 1 預金保険制度の仕組み
*3 年収100万円で楽しく幸せに生活する方法
*4 銀行ATM手数料比較調査、コンビニATM手数料比較/ホームページ作成会社 ウェブバナナユナイト
*5 金融機関の破綻 ― 4.仮払い
*6 ペイオフの影響は預金者全員に![300万円貯める!殖やす!]All About Japan(1/3)
*7 「名寄せ」とは何?
*8 3 金融機関が破綻したときの預金等の扱い ニ. 仮払金の支払

030605

 砲台研究家の第一人者であるネーモン*1氏が本業*2掲示板*3に遺構と全く関係ない情報を書き込んでくれた。

 それは日清食品*4のチキンラーメンに関する情報であった。チキンラーメンは筆者の好きな即席ラーメンの一つである。以前、この雑記草でも取り上げた*5ことがある。ネーモン氏からこの記事を読んだ感想をメールで頂いたことがあった。

 この記事で、チキンラーメンを*6に入れて、乾燥面の上に生卵を乗せてその上から熱湯を注ぐとどうしても卵が麺からずり落ちてしまう欠点について書いた。

 その解決法として乾燥面の中央部分を少し凹ましたらどうか、と書いた。

 とうとうそれが実現した。そうなったことを筆者は全然知らなかったが、ネーモン氏がこの記事のことを憶えていて新しいチキンラーメンで凹みが出来た、と掲示板に書き込んでくれた。

 早速確かめてみると、凹みが出来ている*7発売45周年記念*8で改良が加えられたらしい。

 こういった工夫は普通、実用新案や特許の申請*9を行いそうだが、紹介のページには一切そんなことは書いてない。店頭に並んでいる凹み有りのチキンラーメンの袋のどこにもそんなことは書いてなかった。

 この凹みを作るという工夫は筆者によって3年前に発明されて、雑記草で公表してしまっている。実用新案や特許を調べれば、もっと昔に公報で公開されているかも知れないが、少なくとも3年前には筆者が公に知らせてしまっている。公に知れ渡った技術は特許化できない*10ことになっている。

 こういった関係で特許出願が出来なかったのかも知れない、と想像すると楽しい。もし日清食品の人が雑記草の記事を読んで凹みを付けることを思いついたのであれば、チキンラーメン一年分送ってくれてもいいと思う。



*1 1945年(昭和20年) 米軍のコロネット作戦に対する日本軍の防衛
*2 遺構探訪
*3 遺構探訪掲示板
*4 日清食品
*5 チキンラーメン
*6 どんぶり勘定
*7 たまごポケットのひ・み・つ
*8 2003年04月24日 <ご案内> チキンラーメン発売45周年
*9 特許庁ホームページ
*10 特許法 第2章 特許及び特許出願

030606

 父がバロン吉元*1の漫画を沢山集めていたので、よく読んでいた。

 最近は漫画を殆ど読まなくなった。そんな中で、角川書店*2の季刊雑誌「*3」に連載されている水木しげるの漫画だけは定期的に読んでいる。それ以外で最近読んだと言えば、田中圭一*4の「神罰*5」という単行本ぐらい。

 バロン吉元の漫画*6でよく読んだのは「柔侠伝*7」シリーズ、「高校四年生」だった。数年前には「忍者じじ三太夫」と「マンガ日本の古典17*8 徒然草」とを読んだきりである。

 筆者にとってバロン吉元*9の漫画の魅力は、漫画に登場する美人たちである。話しも勿論面白いが、登場する女性が筆者好みなのである。大抵、風吹ジュン*10を彷彿とさせる。筆者は風吹ジュンも好きなのである。雑記草で話題にした筆者好みの女性は長谷川理恵*11高野志穂*12伊藤裕子*13だが、自分でも共通点が何なのかはよく判らない。基本的には丸い顔が好きなのであるが、登場した女性は必ずしも丸顔ではない。

 理由はどうであれ、とにかくバロン吉元の描く女性*14に惹かれてしまうのである。



*1 バロン吉元 ダウンロードサイト
*2 web KADOKAWA
*3 ヴィレッジバンガード 季刊雑誌「
*4 うちゅう人田中太郎
*5 神罰
*6 バロン吉元の部屋 コミックス一覧
*7 The Manga Japan Official Home Page バロン吉元
*8 中央公論社
*9 日本漫画学院ウェブサイト バロン吉元 先生
*10 風吹ジュン
*11 *-*-* 長谷川理恵 Rieism //リエイズム// *-*-*
*12 平成14年度前期 連続テレビ小説「さくら」
*13 伊藤裕子 PRIVATE ROOM
*14 日本漫画家協会 バロン吉元 増田町まんが美術館:常設展示作品/バロン吉元

030607

 内田百けん*1が、自分の著作を新聞社が勝手に直してしまうのでもう新聞には決して書かない事にしていると随筆*2に書いていた。

 勝手に直してしまうのは仮名遣いである。この随筆が発表されたのは昭和三十一年なので、既に現代仮名遣い*3は普通に使われだしている頃だろう。内田百けんは歴史的仮名遣い*4を信奉してその著作ではそれに従っているのだが、新聞社は現代仮名遣い*5に直して掲載しようとするらしい。

 ある時その勝手に直そうとする新聞社から短い文章の寄稿を頼まれたらしい。簡単に断るのは面白くないので、引き受けたようだ。ただし、歴史的仮名遣いと現代仮名遣いとが同時に成り立つようにしたというのだ。こうすれば新聞社で勝手に直されることはなくなる。

 大体ハ行とワ行との活用を使わないように心掛ければできると随筆には書いてある。

 一体どんな文章だつたのだらう。一寸した文を数行書いただけでも歴史的仮名遣ひと現代仮名遣ひとの間に食ひ違ひが出てきてしまふ。漢字を多用すれば仮名遣ひは相対的に減る。ハ行とワ行に加へてかういつた工夫もすれば何とか出来ないこともない。

 更に百けんは歴史的仮名遣いから現代仮名遣いに直すと文章の意味がまるっきり反対になる物を考えてようとしていたらしい。これは相当難しいのではなかろうか。どんな文章を考えていたのか知りたい。



*1 宮城道雄の事故
*2 驛の歩廊の見える窓 四 假名遣ひ
*3 国語教育コースホームページ 現代かなづかい
*4 Word Word Word Criticism 正字正かなポータル
*5 菊池真一研究室 漢字研究・漢字資料 現代仮名遣い

030608

 本来ガラスは水を弾かない。丁寧に洗浄したガラス板を水に浸けて取り出すと、ガラスの表面が水の膜で覆われている。こういった現象を「濡れる*1」という。水は表面張力*2で丸くなろうとするが、ガラスの主成分である酸化シリコンは水分子と馴染みやすいので水が丸くなろうとする*3のを引き留めてしまう。酸化シリコンに含まれる酸素原子*4水の水素原子*5とが弱い結合を形成するからだろう。水分子同士では互いの水素原子と酸素原子とが弱い結合*6している。水分子は酸素原子を多く含むガラスの表面も水分子の続きだと思って馴染んでしまうのである。

 ガラス食器などを洗った時、その表面で水を弾く部分があればその部分は油汚れ等が完全に落ちていないことになる。油には水や酸化シリコンのような弱い結合が出来る状態の酸素原子が含まれていないから水とは馴染まない。

 自動車のガラス撥水加工等にはこれを利用*7してしている。ガラスに均質に*8が塗られていればきれいに弾かれる。

 油とガラスとは濡れやすいのか弾くのか。*9を主成分とした自動車ガラスコーティング剤*10をガラスに塗ると、作業中はコーティング剤自体がガラスに弾かれているように見える。ガラスは水に濡れやすく、油は水を弾く。コーティング剤は水を弾く物質の筈だからガラスにも馴染みにくい、と考えれば弾かれても不思議はない。弾かれてしまうとガラスに被覆ができないことになる。ところがちゃんとガラスにコーティングされて数ヶ月間は雨を弾いてくれる。

 何となく不思議だが、油汚れはどんな物にも大抵頑固に付着していまうので水の濡れやすさに関係なくガラスにもコーティング剤はちゃんと付着するのだろう。



*1 協和界面科学 界面化学の現象のページ
*2 NSIII「水と人間」講義資料2002 水の特性(その4) ---- 表面張力(Surface tension) ----
*3 協和界面科学 接触角計講座のページ
*4 SPIE--The International Society for Optical Engineering. The Optics, Photonics, Fibers, and Lasers Resource. OER 166: Looking glass
*5 Visualizing Molecules Binary Molecules
*6 Aula Virtual de Biolog
*7 眼鏡かわら版 第113回:撥水性と親水性
*8 シリコーンオイル
*9 有機ケイ素の化学とその利用(暫定版)- - 身の回りのシリコーン系製品を中心として - -
*10 Rain-X

030609

 自動車のガラス撥水コーティング剤でよく見かけるのは「Rain-X*1」と「ガラコ*2」とである。

 ガラスに付着した雨を弾くので「Rain-X」は判りやすい。最後の「x」は何となく雨を吹き飛ばすというか、素晴らしい効果があるという感じがする。

 「ガラコ」は全然判らなかったが、ついこの間気が付いた。ガラス+ーティングで「ガラコ」である。

 容器には大きく「gla'co*3」と書いてある。英語式に読めば「グラコ」である。どう工夫しても「ガラコ」とは読めない。しかも名前の途中に「'」がある。スペイン語かポルトガル語かも知れないと考えた。もしかしたらスペイン語では「gla」は「ガラ」と読むかも知れない。と思っていた。

 「gla'co」はglass+coatingで、glassは日本では「ガラス」というから「gla'co」で「ガラコ」にしたのであろう。

 「Rain-X」よりも発売がかなり後だったので、自動車窓ガラスコーティング剤の代名詞として「ガラコ」は殆ど使われない。「レインエックス」ならば日本語でもコーティング剤を連想しやすいが、「ガラコ」では何なのかさっぱり判らない。この名前でかなり損をしているかも知れない。



*1 Rain-X
*2 soft99_ ガラスコーティング剤・ワイパー
*3 soft99_ぬりぬりガラコ

030610

 変わった形の消しゴムを見つけた。変わった形と言ってもこういった玩具のような消しゴム*1という訳ではない。機能を追求した結果、出来上がった形の消しゴムである。

 一辺が1cmの立方体の小さな消しゴム交互に十個組み合わせた形*2をしている。「カドケシ」という名前である。通常の直方体の消しゴム*3は角が八箇所しかないが、小さな立方体を組み合わせているので「カドケシ」は28箇所ある。

 細かい部分の修正に便利そうだが、筆者は「消しゴムの角」が沢山あればと思ったことは特にない。八箇所で十分であった。細かい部分を消す時は字消し板*4を使っていたので、消しゴムを削って角を出してから細かい部分を消す、という作業はしたことがない。

 そもそもそういった細かい図や文字を鉛筆で書くことはあまりなかった。

 「カドケシ」の大きさは縦20mm×横50mm×高さ20mmで、値段は150円である。同じ製造会社の通常の消しゴム*5は縦19.8mm×横54.5mm×高さ10.7mmで、値段は80円となっている。「カドケシ」の大きさは通常の消しゴムのほぼ二倍になっていて、値段もほぼ二倍である。しかし使用されている消しゴムの材料そのもの量は殆ど同じなのである。

 なんとなく調味料の瓶の蓋の穴を大きくされたり、ドーナツの穴*6を大きくされたような気がして釈然としない。



*1 新発売!★『あったか亭』 消しゴム!★
*2 消しゴム<カドケシ>スチレン系エラストマー樹脂 20x50x20mm
*3 消しゴム博物館 消しゴムラインナップ
*4 ArtBe COMIC Shopping コミック画材 通版Site 字消し板
*5 プラスチック消しゴム鉛筆用19.8x54.5x10.7
*6 スチューレオナルド

030611

 「洒落のデザイン*1」という本を最近手に入れた。江戸時代の戯作者、山東 京伝*2という人が編集した「手拭合(たなぐひあはせ)」という手拭いの図案集を詳しく解説している。それを眺めていたら、面白い図案が沢山あった。山東 京伝*3という名前はこの本で初めて知った。

 その中で漢字を図案にしたものがあった。図案化したと言っても四つの漢字を大きく書いて並べただけである。その四つの漢字は「○己●巳*4」で、「○」「●」はコンピュータでは表示できない漢字である。

 京伝の解説は「○にかみ 己は志(し)もにつきにけり ●ハミなはなれ巳ハミなつく」となっている。「○」は「巳」の真ん中の横棒の左側が付かない字、「●」は真ん中の横棒だけではなく上の横棒も付かない字である。

 現在、使われている漢字は「己已巳」の三種類だが、江戸時代にはあと二つあったようだ。京伝の解説には「○にかみ」とあるので、「巳」の真ん中の横棒の左側が付かない字は「すで」と読む。従って「已」と同じだったのだろう。

 「己已巳」の憶え方は「みは上に(巳) おのれつちのと下につき(巳) すでにやむのみ中ほどにつく(已)」や「キコの声 おのれつちのと 下につき(己) イすでに半ば(已) シみは皆つく(巳)」がある。己の読みを表した「キコの声」の「キコ」とは何のことだろう。「旗鼓*5」との洒落だろうか。鬨の声*6みたいなものだろう。筆者が知っている憶え方は上に書いた最初の歌と「瓜にツメ有り 爪にツメ無し」ぐらいだが、他にも沢山ある*7

 これらの歌の起源は「小野篁歌字尽(おののたかむらうたじづくし)*8」という寺子屋などで使われた往来物*9と呼ばれる教科書らしい。この歌字尽*10には無数の覚え歌*11が載っている。

 「己已巳*12」の部分を見てみる。変体仮名*13とくずし字で読みにくいが、「巳」の真ん中の横棒の左側が付かない字は「すで」と読むようだ。そして「巳」の真ん中の横棒だけではなく上の横棒も付かない字は「ミ」と読むようである。更に「巳」は「き つち」と読んでいたようだ。

 「己」の読み方の「おのれ こ*14」というのだけが現代と同じである。



*1 解説 谷峯蔵・花咲一男 岩崎美術社
*2 江戸net : 江戸人物事典 > 山東 京伝
*3 江戸戯作黄表紙 江戸戯作黄表紙〜黄表紙・洒落本作家、山東京伝〜
*4 onore.jpg
*5 きこ 1 2 【騎▼虎】 - goo 辞書
*6 ときのこえ ―こゑ 4 【▼鬨の声】 - goo 辞書
*7 間違いやすい 言葉の正誤判定 似た漢字の区別法
*8 往来物倶楽部タイトルページ 家蔵往来物紹介
*9 往来物倶楽部タイトルページ 往来物
*10 望月文庫往来物目録・画像データベース 望月文庫往来物目録
*11 ●小野篁歌字尽(おののたかむらうたじづくし)森屋治兵衛/
*12 ●小野篁歌字尽(おののたかむらうたじづくし)森屋治兵衛/ a0000007.jpg
*13 変体仮名表
*14 ●小野篁歌字尽(おののたかむらうたじづくし)糸屋市兵衛/ a0000011.jpg

030612

 雑学専門のサイト*1を作った。サイトを作ったといっても雑記草の記事の中で何かの知識になっているものを抽出して目次を作成しただけである。作ってみると雑記草の目次*2と殆ど変わらなかった。

 分類すればもう少し見やすくなるかも知れない。日本十進分類法*3で分類してみようかと思うが、それが実現するのは相当先だろう。

 サイトの名前をどうするか迷った。最初に「雑学の雑学」を思いついて題字*4まで作った。その後検索サイトで「雑学の雑学*5」を調べたら同じ名前のサイトが見つかったので、この名前はやめた。

 「雑学大勉強*6」「雑学随筆大全」「雑学随想」「予期せぬ雑学知識」などいろいろ考えたが、どれもしっくりこない。

 ひと味違った知識*7を採り上げ、それの由来を詳しく説明しようとしているので「精密雑学」とした。こんな名前のサイトはweb上にはなかった*8

 題字の左にある「獅子っ鼻のちょんまげ小僧*9」の絵には特に意味はない。山東京伝の「手拭合」*10に出てくる手拭いの図案である。非常に面白味があるので貼り付けてみた。この顔は「京伝鼻」とも呼ばれ京伝自身も気に入っていたようで彼の著述の中で何度も登場*11しているらしい。

 この獅子っ鼻のちょんまげ*12主人公*13である「江戸生艶気樺焼(ゑどむまれうはきのかばやき)*14」という戯作を山東京伝が書いているが、この顔自体の初出は「手拭合」らしい。



*1 精密雑学
*2 雑記草の目次
*3 日本十進分類表
*4 zatsugaku2.gif
*5 Google 検索: 雑学の雑学
*6 うなぎ大勉強
*7 Yahoo! JAPAN - エンターテインメント >豆知識
*8 Google 検索: 精密雑学
*9 tenugui2.jpg
*10 己已巳
*11 江戸戯作黄表紙 江戸戯作黄表紙〜黄表紙作品鑑賞〜
*12 「夢・仕事」ホームページへようこそ! てぬぐい 歌舞伎にまつわる手ぬぐい
*13 江戸戯作黄表紙 江戸生艶気樺焼上巻其の一
*14 江戸戯作黄表紙 江戸戯作黄表紙〜江戸生艶気樺焼について〜

030613

 生ごみの堆肥化を始めて*1から半年ぐらい経った。庭が狭いので、専用バケツ*2の中で堆肥化しかかっているごみを地中に埋める場所を決めるのに苦労している。地中に埋めても2、3週間では土にならない。掘り返すと生ごみがそのままの形で出てくる。埋める場所を工夫して何とか堆肥化のやりくりをしている。

 このお陰で庭にはミミズが激増した。庭はミミズ天国となってミミズの糞*3だらけである。ミミズの糞と言っても成分は土ばかりなので全く問題はない。それに沢山のミミズが地面を掘り返すことにより庭の土が自動的に耕されるので、土の中への空気や水の通りが良くなり庭の草木にとっては好ましい*4

 先日、何十匹ものミミズが地表で集結しているのを見かけた。フツウミミズ*5ばかりである。筆者の理想は鮒釣りに使えるシマミミズ*6の繁殖だが、それは見あたらない。シマミミズは藁を好むから藁を一緒に埋めてやればどこからか集まってくるかも知れない。

 それにしてもミミズたちは一ヶ所に集まって何をしていたのだろう。集団交尾なのだろうか。ミミズの場合、尻尾を絡めるわけではないので交尾といわず、交接と言うのが普通らしい。

 ミミズは雌雄同体*7である。一つの個体で雌雄の交接器を持っている。環帯*8と呼ばれる器官の近くに雄の部分と雌の部分がある。雌雄同体なので一個体でも受精して卵を産めるはずである。実際はミミズ二匹が互いの交接器を結合させることによって受精*9する。

 必ずしも二匹で行う必要はない。三匹でも同時に交接は可能である。三角形になればいい。こうすれば三匹相互に遺伝子交換が出来る。この方法であれば何匹でもいける。十匹いれば十角形になればいいのである。実際には二匹で生殖行為をしているようだ。今回のように何十匹ものミミズが集結した時には「三角交接」ぐらいは起こってもよさそうだ。実際はどうなのであろう。

 これを人間で喩えるといろいろ想像できる*10が、この辺りで止めておこう。



*1 ボカシ
*2 ボカシ肥料容器、コンポエース
*3 「落ち葉とミミズ」 ミミズのフン
*4 「落ち葉とミミズ」 すみかの観察
*5 生薬の特徴と長所 ジリュウ(地龍)
*6 エサ トップ 淡水のエサ1
*7 Earthworm Dissection
*8 「落ち葉とミミズ」 ミミズのつくり
*9 みみちゃんプロジェクト ミミズの交接
*10 ホタテエラカザリ

030614

 普通のミミズは雌雄同体*1で、二匹が互いに精子を受け渡して受精し卵を産んで増えていく。中にはヤマトヒメミミズ*2のように勝手に自分の体をちぎって増えていく*3種類もある。無性生殖するヤマトヒメミミズ*4は生殖器官がないようだ。

 無性生殖する生物は沢山いる*5。哺乳類では一個体が勝手に分裂して増えると言うことはないようだから、無性生殖は体の仕組みが簡単な生物に限られるのだろう。

 生物の進化とはその体の構造の複雑化とすれば、魚類や両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類で行われている有性生殖は無性生殖の進化の結果だろう。無性生殖であれば相手を見つけることなく自分一人で増えていくことが出来てすこぶる便利である。何故、わざわざ有性生殖に進化していったのだろう。

 無性生殖は親の複製なので生きている環境が変化すると受け継いだ遺伝子の情報だけでは対応しきれなくなる可能性がある。そこで他の環境で生きてきた別の個体の遺伝子情報を取り込むことで、環境の変化に対応するために性が分化*6したらしい。

 しかし遺伝子情報の交換だけが目的ならば性の分化は必要ない。ゾウリムシには性がある*7ようだが、「接合*8」という仕組みを用いて遺伝子の交換をしている。これににたようなことをすれば性は必要ない。ゾウリムシは単細胞だからそれが可能であるが、多細胞で複雑な器官があるとゾウリムシのような接合は無理である。

 分裂によって増える生物は分裂した部分から元の形になるように細胞が再生したり、体の一部から芽が出てくる*9。例えば自分の指先に芽となる部分が出来たら誰か同じ様に芽が出ている相手を見つけ、芽同士を接触させると「接合」が起こり、芽の部分の遺伝子が交換されようになれば、性は必要ない。やがて芽は成長して自分と同じ様な形になったところで切り離される。元の自分の遺伝子と成長した芽の遺伝子とは違っているので、目的は達せられている。

 何故、この様な簡単な仕組みを進化の過程で採用しなかったのだろう。それに最も不思議なのは無性から有性への仕組みの飛躍である。もともと「性」という特徴がなかった無の状態から「性」という特徴を持つ有の状態が現れてきたのだ。一体、進化の過程で何があったのだろうか。



*1 ミミズ天国
*2 ヤマトヒメミミズ
*3 有性化法と有性個体
*4 ヤマトヒメミミズとは?  〜その生殖と再生〜
*5 無性生殖と有性生殖
*6 卵胎生(らんたいせい)のしくみ
*7 MWHOME ゾウリムシの接合
*8 ゾウリムシ接合過程の核変化の観察
*9 ヒドラの上皮細胞の移動

030615

 雌雄同体と雌雄異体とではどちらが進化しているのだろうか。魚類や両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類では雌雄同体はいなさそうなので雌雄異体の方が進化しているように思える。植物の場合はどちらがどうとも言えない*1感じがする。

 生物の進化の過程からすると、おそらく最初の生物には雄雌の区別はなく単独で分裂して増えていったのであろう。それが突然なのか徐々になのか分からないが、生殖を専門に行う部分が出来て雄の部分と雌の部分が出来上がったのだろう。

 雌だけで生殖する生物*2もいるが、普通は雄と雌とがいないと生殖ができない。普通に考えれば雄と雌とがそれぞれの個体に出来あがったのではなく、一つの個体に雄雌の器官が出来てそれが進化の過程でどちらかに特化していったのではないだろうか。

 例えば雌雄同体のミミズ*3が進化して雄の機能だけを持つミミズと雌の機能だけを持つミミズとに別れていくと考えれば分かりやすい。

 人間の場合はどうか。生殖器は男も女も元は共通で、胎児が成長する過程*4で遺伝子情報に従ってそれぞれの形になっていく。睾丸*5は卵巣、陰茎は陰核、金玉袋*6は大陰唇、といった具合に男性器と女性器が対応している。哺乳類は皆こうなっているのだろう。

 性器のもともとの器官が胎児の成長の過程で発生*7し、それが分かれていく。生殖に最も重要な睾丸と卵巣との元となる器官*8には睾丸と卵巣の要素がそれぞれが含まれている*9らしい。

 ということは哺乳類でも雌雄同体が基本になっていることなのだろう。自分の中にも女性の元があると思うと何やら変な気分である。



*1 植物の雌雄性
*2 分子遺伝学 ゲノムインプリンティングとは?
*3 ミミズ天国
*4 Visembryo
*5 似ている植物
*6 金玉
*7 laurier:便秘
*8 性の分化
*9 細胞分化研究部門 生殖腺の形成から生殖活動の包括的な理解へ

030616

 最近は昼間でも自動車の前照灯を点灯したまま走行*1しているのをよく見かける。営業用の車両や輸送用の車両が殆どである。前照灯を昼間に点けることにより自車を目立たせ、存在を早めに知らせることにより交通事故の発生を防ぐのである。

 昼間に前照灯を点ける習慣はたしか北欧で始まったと思う。これらの緯度が高いところは太陽の高度が低いので一日のうち薄暗い時間が長い。こういった事情から出来上がった習慣を緯度の比較的低い日本で広めて効果があるのだろうか。

 ここで話題として取り上げるぐらいだから、目立つことは間違いない。しかしもともと見えているものが更によく見えることによって事故防止につながるのだろうか。10mまで近づいてこないと見えてこなかった自動車が前照灯を点けることによって100m先から見えるのであれば、効果は絶大である。100m先から見えだしているところへ前照灯を点けることにより190m先から見えるようにすることに意味があるのだろうか。日本で昼間点灯すると言うことはこういう事なのである。

 10mまでしか見えない天候か100m先まで見える天候かといった判断をいちいちするのは大変だから、一律に昼間点灯を義務づけた方がいいという考え方もあるが、そんなことも判断できない人に自動車の運転が出来るようにすること自体が間違っている。

 昼間も前照灯を点灯すると言うことはそれだけエネルギーを余分に使うことになるので、余分に使うエネルギーに見合った交通事故防止の効果がないとエネルギーの浪費となり、環境破壊の主役である自動車はますます荷担していることになる。これを少しでも軽減するために昼間に点灯する前照灯を消費電力が非常に小さい発光ダイオードにする*2という方法も考えられているが、真っ昼間から前照灯を点灯するのが本当にいいのか判らない状態では意味のある方法とは言えない。

 そういった風潮がある一方、一般の乗用車は夕方や雨の日など薄暗い状態でも前照灯を点けないのが圧倒的に多い。都市部はそうでもないが、田舎に行けばいくほど前照灯をなかなか点けない。燃費も大切だがこれでは歩行者や自転車など路上の弱者にとって危なっかし過ぎる。

 自動車を運転すると言うことは「危険業務に従事」しているという認識が薄すぎる。



*1 Google 検索: ヘッドライト 昼間
*2 昼間点灯、デイライトに。データイムランニングランプ:二葉計器

030617

 リコーがフィルム式のカメラ製造事業*1から今年度中に撤退する。デジタルカメラの方がよく売れているのでフィルム式のカメラは儲からないようだ。

 この撤退のニュースが報じられたのは今年四月下旬*2で、その一ヶ月前に二台目のリコーのカメラ「GR1v*3」を買っていた。安く買えたのはこの撤退の噂が既に出ていたためかも知れない。

 撤退となると心配なのは修理である。部品の保有年数*4は製造打ち切り後、7年以上はあるらしいのでそれ程気にしなくてもいいかのしれないが、何となく対応が遅くなるような気もしないでもない。修理工場と生産工場は別だろうし、フィルム式の修理もデジタル式の修理も同じ工場だろうから杞憂に過ぎないだろうが、やはり気になる。

 今までフィルム式のカメラを作っていた工場のラインでは、代わりにデジタルカメラが流れるだけだろう。基本的な構造はフィルム式もデジタル式もそれ程変わらない。だからまたフィルム式のカメラの生産が場合によっては復活する可能性は十分ある。カメラは生活必需品ではないので、記録形式はこうでなければならないという必然性は全くない。フィルム式からデジタル式への変化は単なる流行に過ぎない。

 しかし巷のDPE*5がデジタル用のプリント屋になってしまったら、フィルム式カメラの復活は相当難しくなる。まぁ、その頃には安いデジタル式カメラでも相当画質が良くなっているだろうから、フィルム式にこだわる必要はなくなっているだろう。



*1 CAMERA LIBRARY
*2 JDN /デザインエキスプレス /030423 /ジャパンニュース 10 ■ リコー、フィルムカメラから撤退
*3 GR1v(2)
*4 社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会/公正競争規約の紹介 / 製造業表示規約の紹介
*5 DPE

030618

 リコーは環境保全に力を入れている企業*1である。企業が環境保全にいくら力を入れても環境保全自体がその企業の目的ではないので、企業が営利追求行為をすれば、自然環境状態は現状よりも必ず悪化する。その度合いを出来るだけ小さくしようとするのが企業の環境保全活動ということになるが、その行為自体は免罪符*2的な側面もある。免罪符が悪いわけではないが、それを用いた企業宣伝などが度を過ぎると不遜になりかねない。

 そのなかでリコーはこんなことをしている。自然エネルギーを使ったネオン広告塔*3を作ったらしい。このネオン広告塔には小型風力発電機と太陽電池とが備え付けられており、これで発電された電力が蓄電池に充電され、夜になるとその蓄えられた電力でネオンサインを点灯させるらしい。

 天候によっては十分充電できず、ネオンサインを点灯することが出来ない日が出てくるという。そういう場合、自動的に商用電力に切り替えることは技術的には非常に簡単なことであるが、敢えてリコーはそういった自然の不規則性を受け入れている。環境保全を推進するにはそれくらいの発想の転換が必要であるという認識なのである。

 全く商用電力を使わないので、経費の節減にもなる。蓄電池や風力発電機の管理維持費が余分にかかるが、電気代より安くなるという計算なのだろう。

 自然に頼っているためネオンが点かなくて広告が出来ない日が出てくる。石油資源の一部を使い二酸化炭素を大気中に放出しながら出来た電気を用いるテレビジョン広告で環境保全の宣伝をする行為と較べると、潔い感じがする。



*1 リコーグループの環境経営
*2 THE BRITISH LIBRARY - The world's knowledge Related Items INDULGENCE
*3 自然エネルギーで点灯するネオン広告塔

030619

 よく混同する言葉で「キャリパー」と「キャリバー」とがある。「パ」と「バ」との字も発音もよく似ている。そもそも「キャリパー」も「キャリバー」も特定の分野でしか耳にしない単語である。

 「キャリパー」は英語で「caliper」と綴る。辞書で調べる*1カリパス*2のことであった。カリパスとは直接物差しを当てて測りにくい物の長さを測るコンパスのような道具の総称である。管の外径を測るのに適した形状のカリパスを「外パス*3」、管の内径を測るのに適した形状のものを「内パス*3」という。

 「コンパス」も「カリパス」もどちらも「パス」がついているが、英語の綴りはそれぞれ「compass」と「calipers」なので全く違う。日本語だと「コンパス」「カリパス」「内パス」「外パス」なので、皆「パス」の仲間のような気がしていた。

 筆者がよく聞くのはのディスクブレーキの「キャリパー」である。ディスクブレーキ*4は車軸に取り付けられた鉄製の円盤を強い力で挟むことによって車輪を制動をさせる。この円盤を挟む部分を「キャリパー*5」と呼ぶ。

 なぜディスクブレーキの円盤を挟む部分が「キャリパー」というようになったのか。円盤を挟むようになっているのが「外パス*6」で円盤の厚みを測る姿に似ているからだろう。

 「キャリバー」という言葉を筆者がよく見るのは時計関係*7である。本来は拳銃などの口径を表す。45口径ならば「45 caliber*8」らしい。時計の場合は外径もしくは等級*9という意味だろうか。

 もともとcaliperはcaliberが変化した言葉*10らしい。caliberを測るためのコンパスでcaliber compassがcaliperになったようだ。道理で混同し易いはずだ。



*1 cal・i・pers - goo 辞書
*2 Mark Heayn Stock Photography, Comps online, down loadable stock for comps, category: Still Life
*3 caliper. The American Heritage Dictionary of the English Language: Fourth Edition. 2000
*4 ホンダ二輪フィル メカ講習【日常点検のポイント】
*5 ブレーキ講座
*6 Rantek Precision Enginnering Tools > Hand Tools > Outside Calipers
*7 Swiss Watches - The Zenith Pages: Caliber El Primero 410
*8 The 45 Colt
*9 cal・i・ber, cal・i・bre - goo 辞書
*10 Online Etymology Dictionary ETYMOLOGY Cab-Cap

030620

 時々「耳触りのよい*1」という言葉を見たり聞いたりする。「聞いた時の感じがよい」という意味で最近できた言葉である。辞書にも載っている*2

 「耳障り」という言葉は以前からあるが、「耳触り」という言葉は最近までだれも使っていなかった。それが使われだした。手触り、肌触りなどの連想から「耳触り」という言葉を使いだしたのだろうが、「耳障り」という漢字を知っていれば「耳触り」など決して連想できない筈である。「耳触り」という言葉を平気で使われると「障る」という言葉を知らないのかと思ってしまう。

 よく似た言葉に「目障り」がある。何故か「目触り*3」という言葉を使う人はいない。使っていても「目障り」の単なる間違いで、「見た時の感じ」という意味では使っていない。

 耳で聞く音も目で見る光も直接触れないのに、「耳触り」という言葉はよく使われ、「目触り」という言葉はまだできてもいない。一体この違いはどこからくるのだろうか。

 音は空気の振動である。空気は風になれば肌で感じることが出来る。現代の大人であれば大抵は音や風の正体を知っているだろう。光も振動だが、何の振動なのか今ひとつ実感し難い*4。つまり音は耳で「触る」ことが出来るが、光は目で触ることが出来ない、ということが直観的にもしくは無意識に理解されている結果なのかも知れない。音の正体は明治時代以前ならば殆どの人には解らなかったろうから、光と同様に音も当時は「さわれなかった」に違いない。

 こう考えれば現代において学校教育が浸透した結果、「耳触り」という言葉が出来たとも考えられる。「障る」という言葉は知らないが、音が空気の振動であることは知っているという状態なのであろう。

 「耳触り」という言葉が出来たもう一つの理由は、耳を触られるといい気持ちになる人が多い*5からだろう。だから「耳触りのいい」という言い回しが出来たに違いない。目を触られて気持ちがいい人は滅多にいないから「目触りのいい」という言葉は出来てこない。

 これが理由だとするともっと昔から「耳触り」という言葉が出来上がってもおかしくはない。やはり「障る」という言葉を知らない人は昔は少なかったのだろう。



*1 Google 検索: 耳触りのよい
*2 みみざわり ―ざはり 3 【耳触り】 - goo 辞書
*3 Google 検索: 目触り
*4 ドップラー効果(2)
*5 耳穴治療

030621

 昨日の「耳触り*1」からではないが、「耳カップ*2」というのを作った。これを見て「耳触り」というようなおかしな言葉を思い出し、覆車の戒め*3とするためである。

 というのは嘘で、大昔に買った「耳針穴位模型*4」の置き場所に困ったから、何となくコップに貼ってみたのである。貼ってみるとなかなかいいので少し自慢するために記事にした。



*1 耳触り
*2 earcup.jpg
*3 馬馬虎虎 −風来のわんちホームページ− 覆車の戒め
*4 続風雲古玩城 前哨戦 ※筆者が購入した時は入れ物はなく、裸であった。

030622

 アメリカには沢山の王様がいる。「石油王」のロックフェラー、「鉄鋼王」のカーネギー、「鉄道王」のバンダービルト、「ホテル王」のアスター、「金融王」のモルガン、「発明王」のエジソン、「自動車王」のフォード、「ソウル王」のジェームズ・ブラウン*1、「ポルノ王*2」など。

 新たな王様を見つけた。「直結王」である。この言葉を見ただけでは、何を「直結」するのかさっぱり判らない。

 自動車のスタータモータ*3の電源を自動車の鍵を介さずにバッテリーと「直結」する王様である。つまり自動車泥棒なのである。この「直結王*4」の話しによると、スタータモータとバッテリーとが直結できれば どんな自動車でも盗めるらしい。逆に直結できなければ自動車が動き出さないので盗めないという。

 従って「直結できない」構造にする自動車盗難防止装置は完璧である、という自動車盗難防止装置製造業者*5の広告であった。

 その広告には「アメリカでプロの自動車窃盗犯に対して行った質問とその回答」とまで書いてある。しかも「直結王」であるゲーリー・ウィリアムズ氏の写真付きだ。英語では「hot-wire king*6」と呼ばれていることになっている。

 謎の外国人が登場してくる広告*7明治の頃*8から盛んに行われていて、それを見ると大抵は胡散臭く感じてしまうが、ここまでやって頂けると清々しく思えてくる。



*1 ames Brown Homepage
*2 Google 検索: porn king
*3 始動装置
*4 自動車盗プロへのインタビュー
*5 PowerLock車両盗難防止装置トップページ
*6 PowerLock: Interview with a Car Thief
*7 bittorusan.jpg
*8 グランドデザイン薬局を目指す山口旭薬局 明治・大正時代のくすりの広告

030623

 ある雑誌を読んでいたら「自動車から離れる時には必ず鍵を抜く。これだけで盗難の三割は防止できる」と題された記事が目に留まった。

 題名に惹かれてその記事を読んでみたが、意味がよく判らなかった。何度か読んでも結局何が言いたいのかがどうもよく判らない。記事の内容は、2002年の自動車の盗難台数*1は約60000台で、そのうち約20000台は自動車の鍵が差し込んだままになっていた、というものであった。三分の一が鍵の付けっぱなしの状態で盗まれているので、施錠すれば約三割は盗難されなくなるというのである。

 自動車の盗難台数のうち鍵が付けっぱなしの状態で盗まれたのが三割だから、少しでも自動車から離れる時は鍵を抜くようする人が増えていけば、盗難台数のその分が減ると考えるのはいい。しかし鍵を抜いたとしても約40000台は盗まれているので、鍵を抜くことのみが盗難防止の根本ではない。

 読んでいて解らないのは「これだけで盗難の三割は防止できる」というのが誰にとってどういう意味があるのか、ということである。

 この雑誌は一般の人を対象にしている。記事の読者は自動車の盗難防止に関心がある人が殆どである。その中にはコンビニエンスストアで買い物をする時、ちょっとした物を買う時には自動車の鍵を付けっぱなしにする人がいるだろう。自動車から離れる時には必ず施錠する習慣が身に付いている人にとってはもともと意味のない情報であるが、そういった習慣のない人にとって「三割は防止できる」というのは意味がある情報だろうか。

 意味はない。そもそも「三割は防止できる」というのは何に対しての三割なのか。鍵を抜き取れば盗難される確率が三割減るのだろうか。前述の統計結果からそんなことは判らない。統計では盗難台数の三割が「鍵付き自動車」ということが判るだけである。そのことから鍵を抜き取ると自動車を盗まれる確率が三割減らせるとは読み取れない。

 鍵を抜き取れば確かに盗難される度合いは減る。しかしその減り具合は盗難車の鍵の有無の比率から計算できるはずがない。ある駐車場で全自動車の鍵が付けっぱなしの場合と鍵を抜いた状態の場合とで盗難の実験をして、初めてその度合いが計算できる。

 そんな実験は実現不可能だから、便宜的にそういう計算で代用しているだけだと言われそうだが、そんな数字をはじき出して貰っても全く役に立たない。「三割」という数字に意味が見いだせるは盗難台数の増加が収益に大きく影響する自動車保険会社*2ぐらいである。

 こういった記事の書き方をされると、関係がないあるいは意味のない具体的な数字を敢えて出すことで記事の信頼性を高めようとする魂胆があるのではないかと思えてくる。たちが悪いのはこういったことを無意識にやることだ。これは文章だけではなく会話の中でも出てくることがよくある。

 「数学が出来る人は頭がいい」という主張を誰かがしたとする。すると「○○さんは頭がいいけど数学が苦手だ。数学が出来る人が必ずしも頭がいいわけではない」と無意識なのかわざとなのか反論にならない反論をする人がいる。これは「1足す1は2だ」という主張に対して「3から1を引いても2だ。だから必ずしも1+1=2ではない」と同じ議論である。

 こういった論理が破綻した文章を書いたり議論を平気にやられると非常に困ってしまうが、自分も結構そういったことを無意識にやってしまう場合があるので、お互い様かも知れない。



*1 JAMA -JAMAレポート- 1.自動車盗難の現況
*2 RISK MANAGEMENT MIYAGI'S HOME PAGE 自動車盗難

030624

 「金で解決できないことはない」と真顔で言われたり、断言されたりすると、そんな馬鹿な話があるかと思ってしまう。

 本当に全てのことが金で解決できれば、戦争などは起きないだろう。金の仕組みは人類が発明した。この仕組みによって全てのことが解決できるならば、人類の発明でこれに優る物はない。発明は問題解決の為になされるので、「通貨*1」で全てが解決できるならば、他の発明は必要はない。

 現実はそうではないから、「金で解決できないことはない」という主張は間違っていると結論付けたいところだが、そうではない。世の中、森羅万象「金で解決できないことはない」のである。

 どんなことでも金で解決できる。暮らしに関することや社会問題等は勿論、科学技術の世界、自然科学の世界でも「金で解決」できないことはない。

 「おいおい、寝言を言っているのか。そんな阿呆なことがあるか。光より速く飛ぶことが出来る*2ロケットが金を出せば作れるのか。金を出せば不老不死*3になれるのか」といくらでも反論されそうだ。

 「金で解決できないことはない」のであって、「金で実現できないことはない」ではないのである。解決されたかどうかは当事者がそう思うかどうかであって、事実や真実がどうかという事とは別である。様々な技術を金をかけて投入した結果「光より速く飛ぶロケットである」と当事者が思えばそれで解決したことになる。

 何か屁理屈のように聞こえるが、「解決*4」という言葉の意味からすればそう解釈するしかない。

 自分の常識と違うことを言われた時に、その言葉の真意を理解しようとせずに反射的に否定や反論してしまうことがよくある。やはり人の話はじっくり聞かなければならない。



*1 教えて!にちぎん・通貨制度の歴史、豆知識の目次
*2 臨界
*3 東京都老人総合研究所
*4 かいけつ 0 【解決】 - goo 辞書

030625

 「人間原理*1」というのがあるらしい。宇宙の年齢*2が現在160億年というのは単なる偶然ではない。宇宙の年齢を測ろうとする観測者が登場するまでに宇宙が出来てから160億年かかったのである。つまり宇宙の年齢はそれ以外の値をとることはなかったというのである。これはアメリカの物理学者ロバート・ディッケ*3という人が言い出したらしい。

 この考えは先日書いた「金で解決できないことはない*4」と何となく似ている。物事が解決するかどうかは当事者の考え方次第である。物事が実現可能かどうかということなどは関係がない。「人間原理*5」も当事者である人間自体が中心の理論*6である。他の自然の都合は関係ない。

 この人間原理という考え方そのものが出てきたのも160億年後というのも興味深い。「考え」というのは人間の活動に他ならないので、このことは当たり前といえば当たり前である。当たり前であるが、何やら宇宙に、そう考えろと言われて作ったような考え方なので面白い。

 宇宙が出来てから160億年後に人間が出現して、その人間が宇宙の年齢を知りたくなり、その方法を研究して計算してみたら「宇宙は160億歳」となった。人間が宇宙という概念を思い付いて、宇宙がいつからあるのかを考えるようになったのは必然なのか偶然なのかは知る由もないが、宇宙が人間を使って自分の生い立ちを知ろうとした、と考えているのだから奇想天外である。

 自分以外のことは本当は判らないので、全ては人間が中心と考えるのは仕方がない。これはどうしようもない。それにも拘わらず、そうではない宇宙全体の視点みたいなものがあって物理法則などのように全体を満遍なく支配している摂理があるような気がする。むしろそちらの方が人間中心と考えるよりも科学的な考え方のような感じがするが、このこと自体も人間が考えていることなので、「全ては人間が考えたこと」という前提を忘れて宇宙の摂理が存在すると信じるのは科学的ではない。



*1 宇宙情報 人間原理 〜人間中心の宇宙観〜
*2 美星町 星のデータベース 宇宙の年齢
*3 Robert Henry Dicke, May 6, 1916—March 4, 1997 | By W. Happer, P. J. E. Peebles, and D. T. Wilkinson | Biographical Memoirs
*4 金で解決できないことはない
*5 On Anthropic Principle 人間原理について
*6 KATOU Toru's Article IV-4-8 宇宙は人間のためにある!?

030626

 「こだま」という名字がある。すぐ思い浮かぶのは「児玉」である。「子供の玉」というのだから考えてみると何やら凄い名前だ。

 「児玉」という名字の由来は平安時代末期から鎌倉時代にかけて活躍した武士団である「武蔵七党*1」の児玉党らしい。児玉党は児玉と言う地名から来ている*2ようだ。

 では、何故そこの地名は「児玉」になったのだろうか。「たま」というのは「山頂」「頂上」という意味があるらしい。ついでに「たま」の類語で「たば」というのがあって、これは「山頂から山腹にかけての平坦地」という意味である。多摩や丹波はこれが語源である。

 児玉も場所からとすれば*3、「たま」が語源だろう。小さな「たま」で「児玉」になったに違いない。

 愛知県の三河地方には「樹神」という名字がある。「樹神」と書いて「こだま」と読む。これの語源は、かつて山での音の反響の原因と考えられた山の精「山彦」、木の精「木霊」の「こだま」に他ならないだろう。ただ、もともとは「児玉」だったのを木の精の「こだま」の漢字を借りてきて付けたような気がする。

 木の精だから、こだまは妖怪の仲間である。鳥山石燕*4の「画図百鬼夜行*5」の一番始めに「木魅*6」という漢字を当てられて登場する。妖怪の名前が名字というのも珍しい。



*1 神川町−事業のご案内−
*2 児玉党ここによみがえる! 児玉党のおこり
*3 児玉町へのアクセスマップ
*4 鳴屋(やなり)
*5 百鬼灯篭 〜画図百鬼夜行と妖怪と〜
*6 百鬼灯篭 〜画図百鬼夜行と妖怪と〜 木魅(こだま)

030627

 「かっとう」という言葉を初めて聞いた時、その音から、頭の中で何かが争うような感じがして勝手に「勝(かつ)」「闘(とう)」と言う漢字を思い浮かべていた。後に「葛藤」と書くと知って、なぜ後藤の「藤」が使われるのかが不思議だった。「葛」は何とも思わなかった。「葛」の方は元々どういった意味なのか分からなかったし、それを使った言葉も知らなかったからである。

 ふと、「かっとう」はどうして「葛藤」と書くのかが知りたくなった。「葛」や「藤」が絡まっている様子から出来た言葉*1だった。

 「蹂躙*2」「軋轢*3」「殲滅*4」「魑魅魍魎*5」の様に同じ意味の漢字を重ねて出来た熟語*6であった。



*1 かっとう 0 【▼葛▼藤】 - goo 辞書
*2 じゅうりん じう― 0 【▼蹂▼躙】 - goo 辞書
*3 あつれき 0 【▼軋▼轢】 - goo 辞書
*4 せんめつ 0 【▼殲滅】 - goo 辞書
*5 ちみもうりょう ―まうりやう 1 【▼魑魅▼魍▼魎】 - goo 辞書
*6 奈良女子大学文学部附属中等教育学校_国語科 現代文読解のための漢熟語

030628

 web上に散在する知識をつなげる「リンク」という仕組みが素晴らしいと言うことを、以前書いた*1。リンクという仕組み自体は百科事典の「〜を参照せよ」と同じなので、地球全体が百科事典になっているようなものだ。ところが残念なことにリンク先のサイトはそれぞれ自立的なので、百科事典の体裁を保つためには常にリンク先の状態を監視する必要がある。この作業はあまりにも面倒なのでweb図書館でサイトの知識を積極的に保存していく*2しかないと考えていた。

 知識が散在していると言ってもサイトが単独で散在しているわけではなく、サイトを製作した人が散在しているだけである。そこでサイトを製作した人が積極的に「知識をリンク」すれば膨大な著者による百科事典が出来上がる。

 検索サイトはこれに近い。特にYahoo!*3登録制*4なので、ある程度サイトの恒久性を前提にしている。そういった意味で積極的に知識をリンクしようとしている。ただ、リンクに参加する各人は自らプロバイダを選んでそのサイトを運営しているので、恒久的である保証は全くない。

 そこでこのサイトの消失を防止するためには、web上にある場所を提供し、百科事典作りに参加する人にどんどん知識を書き込んでもらう方式を採るしかないだろう。

 フリー百科事典「ウィキペディアWikipedia*5」というのがある。ハワイ語の「wee kee wee kee(迅速な、素早い)」が語源で、HTMLタグを使った文書という意味の「WikiWiki*6」から「Wikipedia」という言葉が出来たらしい。「-pedia」はencyclopedia*7の-pediaである。

 参加する人が自由に書き込んで百科事典を作っていくので、見出しの中には不確かな知識が紛れ込む可能性も多いような気がするが、このウィキペディアの主旨*8などを読んでいるとそんな心配は殆どないような気がしてくる。記事はいろんな人によってどんどん加筆訂正されていくので、記事の確度はどんどん上がっていくだろう。それに執筆に参加するには心理的な相当高い障壁を越えなければならない感じであるので、記事の内容の品質はもともと高そうである。

 「人気のページ*9」というページがある。各記事の内、参照された回数が多いものの一覧がある。これを見ると「なんだかなぁ」という気分になる。中学校の図書館にある百科事典などで特定のページが黒ずんでいるのと同じである。日本でのインターネットはまだ中学生ぐらいの成熟度ということなのだろうか。

 他の言語でも同じ様な結果*10なのだろうか。



*1 相互参照
*2 インターネットアーカイブ
*3 Yahoo! JAPAN
*4 Yahoo!
*5 メインページ - Wikipedia
*6 WikiWiki - Wikipedia
*7 encyclopedia. The American Heritage® Dictionary of the English Language: Fourth Edition. 2000.
*8 ウィキペディア- Wikipedia
*9 人気のページ
*10 Popular pages

030629

 「纐纈(こうけつ)」という名字がある。岐阜県や長野県の名字らしい。近所にこの名字の家が一軒あった。しかし「纐纈」とは書かずに「交告」と書いた。

 この家には筆者より一つ年下の子供がいた。小学生の頃、交告の名前について教えて貰ったことがあった。彼によると「交告」は便宜的にこの字を使っているが、本当はもっと難しい字を使うというのだ。その難しい字というのが「纐纈」だったのだが、当時は難しすぎて教えて貰えなかった。

 筆者の場合、幼少の頃に「こうけつ」という音を先に知って、後ほど「交告」という漢字を知ったので、そういうものだと思い、特に疑問は持たなかった。漢字から入るとそうはいかない。「交」はいいが「告」は「けつ」とは小学生には読めない。知らなければ大人でも読めない。そもそも「告」の読みで「ケツ」というのがない。

 「交告」は「纐纈」の真ん中の部分だけを取りだして出来た名字なのである。なるほど、こういった日本の漢字の簡略化は行われてきた。「藝」から「芸」、「醫」から「医」などと同じである。「芸」や「医」と言う漢字は一般的であるが、「纐纈」はあまり一般的ではないので、名字の世界だけの簡略化となっているのだろう。

 しかしよく見てみると「纐纈」の「纐」の真ん中は確かに「交」だが、「纈」の真ん中は「告」ではなく「吉」である。「告」の音は「コク」だが、「吉」は「キチ」だからこちらの方が「ケツ」に近い。なぜ「交吉」とならなかったのだろう。こちらの方が字としてはいいし、更に左右対称*1となるので非常に縁起がよい。

 糸偏の一画が吸収されてしまって「吉」が「告」になってしまったのだろうか。一体どういう経緯があったのだろう。

 纐纈の元々の意味は絞り染め*2という意味である。「纐」も「纈」もどちらも絞り染め*3という意味らしいから、葛藤*4と同じ熟語の成り立ちである。

 ついでに「纐纈」は結ぶという意味があるため、「こうけつ」の他に「きくとじ*5」「くくり」「はなぶさ」「こうげつ」といった読み方がある。



*1 対称形の名前
*2 こうけち かう― 0 【▼纐▼纈】 - goo 辞書
*3 愛知日本語研究センター 有松絞り
*4 葛藤
*5 きくとじ ―とぢ 0 【菊▼綴じ】 - goo 辞書 参考ページ:装束の知識と着方 装束の種類(直垂)

030630

 亀が逃げ出して*1から一ヶ月以上経過した。全く音信不通の状態である。亀だから音信など無いに決まっているのだが、気配ぐらいあってもよさそうである。外に出た時は必ず、何処かに潜んでないか周りを見回すようにしている。いそうもない。

 亀が必ず帰ってくるまじない*2があるという。使っていた餌用の皿をひっくり返して、その上でお灸を据えるといいらしい。このまじないは熊本で伝えられてといるという。内田百けん*3がそう書いていた。

 本当は猫用のまじない*4であるが、まじないなんていうものはどうせ効かないだろうから、猫用でも亀用でも大した違いはない。

 やってみようかと思ったが、そもそも餌用の皿がない。餌は水槽に投げ込んでいたので皿などはない。皿に入れてやっても亀は顔をつっこんで食べただろうが、そんなまどろっこしいことはしなかった。それにもぐさ*5は家に常備してないので、このまじないをするにはわざわざ買いに行かなければならない。そのためだけに買いに行くのは気が引ける。

 もし、まじないをやるとしたら子供達と一緒にやろう。こういった不思議な儀式は喜ぶに違いない。

 家の周辺には池や川がない。まだ逃げ出してから一月程度なので餌が全くなくとも餓死することはないだろう。季節は梅雨なので水分は十分取れる。自動車に轢かれていなければ十分生きている筈である。

 それにしても戻ってくる可能性はまだあるのだろうか。



*1 亀の脱走(4)
*2 chinbou.jpg
*3 歴史的仮名遣いと現代仮名遣い
*4 Amazon.co.jp: 本: ノラや
*5 丸一製薬株式会社へようこそ



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